第二章 雛鷹村

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 3 「ねぇ、ケイちゃん。どうしてほんとのこと話さなかったの?」  サチの問いかけに、ケイスケはぴたりと歩みを止めてこう返す。 「言ったところで聞かねーだろ。それに……」  言いかけた台詞を溜飲し、サチの左肩に付着していた朱色を準える。  「分かってる」と口の端を緩めた。彼の行動は自分たちの為なのだと。  背後で落ち葉を踏み締める音がし、振り返る。枝葉を割って現れたのは、カスミたち四人だった。 「なんだ。お前ら、戻って来たのか?」  先頭にいたツカサの姿を目視し、ケイスケは安堵の息を吐きながら言った。 「あぁ。あれっ、もう一人は?」 「――! ショウ!?」  先刻まで共に歩いていたはずのショウがいないことに気づき、雑木林の中を見回す。 「まさか、あいつ……」  何か心当たりがあるのだろうか。ケイスケはカスミたちの横をすり抜け、細く二手に枝分かれした小道へと下ってゆく。  
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