第二章 雛鷹村

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 小道から一歩外れると、そこは急勾配になっており、その下には小川が流れている。 「もしかしたら、この下にいるかもしれない」  そう言って木の枝に掴まり不安定な急斜面を下り始めた。  頬に何か生暖かいものが付着する。片手でそれを拭ってみると、指先に纏わりつく粘着質な赤黒い液体。  よく見ると、足元の草木にも赤黒い染みが点々と付着していた。 「これって……血?」  烏の鳴き声と共に木の枝のたわむ音が頭上で聞こえ、ゆっくりと視線を上へと辿ってゆく。 「――っ!」  わずかな木漏れ日を遮り、木の枝にぶら下がった何か。  枝から真っ直ぐ伸びたロープは、丁度首の辺りで縊られている。だが人の容貌からしてみれば、明らかに丈が足りない。 「ショウ……」  急斜面を引き返してきたケイスケは、呆然と人の形をしたそれを見上げる。  止めどなく血を滴らせる彼の両足は、膝上からきれいさっぱり失われていた。腹部も、以前鳥居の前で見た猫の轢死体のように裂けている。  
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