第1章

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放課後の美術室、悠李(ユウリ)は扉の前で深呼吸する。 部活の会議に思ったよりも時間がかかってしまった、流石の美玖(ミク)も今日は怒っているかも知れない。 思い切って扉をガラッと開けると、イーゼルの前で物憂げに思案する美玖が見えてドキッ……っとした。 部活終了時刻はとうに過ぎていて、美術室には彼女しか残っていない。 「あっ、悠李ちゃん。 陸上部の会議終わったの? 」 ふんわりと向けられる砂糖菓子のような笑顔。 頬が熱くなるのが分かり、悠李は急いで顔を背けた。 「もう、何やってるの? 部屋、暗いじゃない。 電気くらい付けなさいよ! 」 ドキドキとする胸の音をごまかすように、悠李は教室の明かりを付ける。 「ごめんね、こんなに暗くなってるなんて気付かなかった。 急いで帰る用意するからね 」 美玖が、イーゼルの上に布を掛けた。
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