prologue

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ふ、と目を開けると、今は見慣れた天井が見えた。 凍てついた感覚は錯覚のようで、布団の中ではしっかりと体温が絡んで暖かい。 第一今はもう春で、朝晩はまだ冷えるけれど一月ほどの寒さではない。 「……やな夢みた」 小さく声に出すと、なんとなく夢だと再確認できて安心する。 私は更なる体温を求めて、隣に眠る男の肌にすり寄った。 いつも寝起きが悪くてちょっとやそっとでは目を開けてくれないのに、珍しく男が身じろぎをした。 「……はるひ? 今何時」 「わかんない。でもまだ朝方だと思う」 カーテンの隙間から射す朝の光は、まだ少し弱々しい。
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