3人が本棚に入れています
本棚に追加
――――その日の夜中。
『――――唯織……、助けて』
頭に響いたのは美咲の声。
天狗松の枝の上で眠っていた唯織は勢いよく体を起こして辺りを見回した。
辺りは真っ暗だが、唯織には関係ない。
何も見逃さないような鋭い視線を周囲に送るが、特に何かいる気配もない。
しかし、全身に嫌な汗をかいている。
すぐ下の枝で眠っている柊に声をかけてみる。
「おい、何か聞こえなかったか?」
「何だよ、何も聞こえないって。 昼間に起きて動き回ってるから夜に寝て、その上おかしい夢を見るんだよ」
「違う、はっきり昼間のガキの声が聞こえたんだ……。 それもなんだか嫌な感じがするんだが」
すると柊が大声で笑った。
「何だよ、何がおかしい」
「お前、やりやがったな」
「俺は何もしていないぞ」
「馬鹿。 お前、昼間のガキと絆を結んできちゃったんだよ」
「絆を結ぶ? そんなことしてないぞ」
「でも、お互いに心を許したんだろう。 絆が結ばれると、相手の感情が流れてくることがあるんだよ。 よりにもよって人間とそんなものを……。 早く断ち切れよ」
「断ち切るって、どうやって」
最初のコメントを投稿しよう!