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「知らねえよ、そんなもん」
「なんで知らねえんだよ!!」
「一度結んだ絆は、そう簡単には切れない。 まぁ、せいぜい頑張るんだな」
そう言って、柊は再び眠りに戻ってしまった。
天狗をはじめ、妖怪たちが活動するのは夜だ。
しかし、昼のアクシデントのせいで眠くてしょうがなくなり、結界の見張りがてら眠っていたのだ。
そして、心のどこかに引っかかる嫌な感情は離れない。
無視をして眠りに戻ろうとしたが、どうしても気になって仕方がない。
唯織は天狗の面をつけて天狗松の一番上に上った。
「おい、どこに行くんだよ」
「ちょっと散歩に行ってくる!!」
唯織は翼を広げて夜空にはばたく。
向かうのは美咲の家だ。
山を下りてすぐのところにある二階建ての木造家屋。
その二階の窓が開いていたので、気づかれないように中を覗いてみる。
そこが美咲の部屋だった。
まだ段ボールが置かれたままの殺風景な部屋の中に真新しいベッドが一つ。
その上で丸くなってふとんをかぶっているのが美咲なのだろう。
布団の中からはすすり泣く声が聞こえてきた。
「また泣いてるのか……」
唯織は美咲に聞こえないように呟いたつもりだったのだが、美咲には聞こえたらしい。
バサッと布団をめくると、すぐに窓のところに駆け寄ってきた。
唯織は慌てて屋根に逃げたが、足を見られてしまったのだろう。
下から美咲が呼びかけてくる。
「唯織なんでしょう? 隠れてないで、こっちに来てよ」
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