第1章

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「知らねえよ、そんなもん」 「なんで知らねえんだよ!!」 「一度結んだ絆は、そう簡単には切れない。 まぁ、せいぜい頑張るんだな」 そう言って、柊は再び眠りに戻ってしまった。 天狗をはじめ、妖怪たちが活動するのは夜だ。 しかし、昼のアクシデントのせいで眠くてしょうがなくなり、結界の見張りがてら眠っていたのだ。 そして、心のどこかに引っかかる嫌な感情は離れない。 無視をして眠りに戻ろうとしたが、どうしても気になって仕方がない。 唯織は天狗の面をつけて天狗松の一番上に上った。 「おい、どこに行くんだよ」 「ちょっと散歩に行ってくる!!」 唯織は翼を広げて夜空にはばたく。 向かうのは美咲の家だ。 山を下りてすぐのところにある二階建ての木造家屋。 その二階の窓が開いていたので、気づかれないように中を覗いてみる。 そこが美咲の部屋だった。 まだ段ボールが置かれたままの殺風景な部屋の中に真新しいベッドが一つ。 その上で丸くなってふとんをかぶっているのが美咲なのだろう。 布団の中からはすすり泣く声が聞こえてきた。 「また泣いてるのか……」 唯織は美咲に聞こえないように呟いたつもりだったのだが、美咲には聞こえたらしい。 バサッと布団をめくると、すぐに窓のところに駆け寄ってきた。 唯織は慌てて屋根に逃げたが、足を見られてしまったのだろう。 下から美咲が呼びかけてくる。 「唯織なんでしょう? 隠れてないで、こっちに来てよ」
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