第二章

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それからというもの、唯織は美咲のもとを頻繁に訪れるようになった。 初めて出会ってから約半年。 最初は天狗松神社の境内で少し話すだけだったのが、最近では唯織が人里まで呼び出される。 唯織が自主的に訪れるというより、美咲が唯織の名前をことあるごとに呼ぶのだ。 今日は美咲の最後の授業の日だ。 明日は卒業式。 そんな日なのに。 「早く!! 急いで!!」 「馬鹿者!! 寝坊をしたのはお前だろう!!」 この日も、朝から唯織は美咲に呼び出された。 朝の八時。 投稿時間は朝の八時半であるにもかかわらず、美咲が目覚めたのは八時だったのだ。 山のふもとにある美咲の家から、彼女が通う学校までは40分以上かかる。 普通に行ったら、確実に遅刻してしまう。 「あと十分で遅刻だよ!! 先生に怒られちゃう!!」 「うるさい、もう着く。 降りるから、口を開けるなよ」 ランドセルを背負った美咲を背に乗せ、他の人間に見られないようにはるか上空を飛んでいた唯織は、学校の傍にある林を見つけると、そこをめがけて急降下した。 殆ど突っ込むようにして林に入り、その中の木に留まると、美咲を降ろした。 「ありがとう!!」 「もう二度とこんなことで呼ぶな!!」 「分かんなーい!!」
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