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そう言って美咲は学校めがけて走っていく。
それを見た唯織は、深くため息をついた。
朝日が眩しい。
通常、天狗は朝眠るものなのだ。
唯織は大きく欠伸をかくと、天狗山に帰るために地を蹴った。
しかし、すぐに地面に落ちた。
「な、なんだ……?」
もう一度、今度は走って助走をつけてから地を蹴って空へと飛びだす。
しかしすぐに地面に叩きつけられてしまった。
――――飛べなくなった……?
天狗にとって、空を飛べないというのは致命的だ。
しかも原因が分からない。
さっきまで美咲を乗せて飛んでいたではないか。
どんなに翼をはためかせても、少し大きなジャンプができるだけで、どうしても舞い上がることができないのだ。
「クソ、何でだ……」
その時、林の入り口から誰かが話す声が聞こえてきた。
「おい、何かいるぞ!!」
「何だあれ?」
よく目を凝らすと、美咲と同じ年くらいの人間の男子である。
明らかに唯織を指差し、目を凝らすようにして様子を伺っている。
なんてことだ。
今、唯織は空を飛ぶことができない。
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