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「朝からどこほっつきまわってるのかと思ったら、何やってんだよ」
「柊か……。 助かった」
「人間のガキ相手にボコボコにやられやがって。 お前らしくない」
柊はからかうように言ったが、唯織は何も言い返す気になれなかった。
「柊……」
「何だよ、急に畏まって」
「俺、飛べなくなったんだ……」
「何?」
「飛べないんだよ。 だからあのガキどもから逃げ切れなかった」
柊は徐々に下降をはじめ、天狗松の木に留まった。
唯織を降ろすと、珍しく真面目な声で話しはじめた。
「飛べなくなったのか?」
「ああ。 今朝は飛べたんだ。 あそこまで行って、帰ってこようとしたときに急に飛べなくなったんだ」
柊が頭を抱えた。
しばらく沈黙が続き、柊が口を開く。
「お前、あのガキとまだ遊んでるのか」
「何がいけないんだ。 お前には関係ないだろう」
「馬鹿野郎!! あのガキと一緒にいるから、お前は天狗の力を失い始めてるんだよ!! お前の父親と一緒だ!!」
そう言ってから、柊はしまったという風に口をつぐんだ。
「どういうことだよ……。 なんだよ、俺の父親と一緒だって……」
「お前の父親は、この山でも一番力のある大天狗だった。 なのに、あの人が好きになったのは人間の女だったんだ」
「そんな……」
「そうだよ、お前は……」
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