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「大丈夫だ……。 なんともない」
「何言ってんだよ、血が出てるぞ」
「ねぇ、これ使っていいよ……」
女の子が震える手で差し出してきたのは、ピンク色のハンカチ。
「い、いいのか……?」
柊が聞くと、女の子は小さく頷く。
うけとったハンカチで唯織の傷を抑え、小さくお礼を言った。
「すまない。 お前の手拭いを汚してしまった……」
「いいの……。 わたしのせいで怪我しちゃったんだし……」
唯織は体を起こすと、その女の子の方に顔を寄せた。
「お前、名前はなんていうんだ」
「私は……、美咲」
「年はいくつだ?」
「十一歳」
「道に迷ったのか?」
「うん」
「そうか……」
唯織が話をやめると、今度は美咲が話しかけてきた。
「お兄さんたち、もしかして、天狗さん?」
「どうしてそう思うんだ?」
「だって、団扇持ってるし、羽が生えてるし……。 おばあちゃんから、この山には天狗様が住んでるから、悪いことをしたら天狗様に連れて行かれるって言われたから……」
「心配するな、そんなことはない。 この手ぬぐいの礼もしなければならないから、家まで送り届けてやろう。 お前、この辺りに住んでいる者ではないな?」
「お母さんとお父さんがいなくなっちゃって……。 夏におばあちゃんの家に引っ越してきたの。 弟と二人で……」
「どうしていなくなったのだ?」
「事故で……」
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