第1章

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「大丈夫だ……。 なんともない」 「何言ってんだよ、血が出てるぞ」 「ねぇ、これ使っていいよ……」 女の子が震える手で差し出してきたのは、ピンク色のハンカチ。 「い、いいのか……?」 柊が聞くと、女の子は小さく頷く。 うけとったハンカチで唯織の傷を抑え、小さくお礼を言った。 「すまない。 お前の手拭いを汚してしまった……」 「いいの……。 わたしのせいで怪我しちゃったんだし……」 唯織は体を起こすと、その女の子の方に顔を寄せた。 「お前、名前はなんていうんだ」 「私は……、美咲」 「年はいくつだ?」 「十一歳」 「道に迷ったのか?」 「うん」 「そうか……」 唯織が話をやめると、今度は美咲が話しかけてきた。 「お兄さんたち、もしかして、天狗さん?」 「どうしてそう思うんだ?」 「だって、団扇持ってるし、羽が生えてるし……。 おばあちゃんから、この山には天狗様が住んでるから、悪いことをしたら天狗様に連れて行かれるって言われたから……」 「心配するな、そんなことはない。 この手ぬぐいの礼もしなければならないから、家まで送り届けてやろう。 お前、この辺りに住んでいる者ではないな?」 「お母さんとお父さんがいなくなっちゃって……。 夏におばあちゃんの家に引っ越してきたの。 弟と二人で……」 「どうしていなくなったのだ?」 「事故で……」
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