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唯織が来ているのは平安時代に名の知れた陰陽師から奪ったものだが、これは唯織の祖父が奪ったものであって、それを唯織が貰っただけだ。
だが、美咲は感心しているようだから、唯織はそれについては黙っていることにした。
話をややこしくしたって何の得にもならない。
「そろそろ行くか。 お前の爺さんばあさんも心配するだろう。 日が暮れれば面倒くさい奴らも出てくる」
「面倒くさい奴ら?」
「お前は何も分かってないんだな? お前が今いるのは、妖怪がウヨウヨしている場所なんだ。 普通の人間が入り込んできて無事に帰れるところじゃないんだよ」
「え、そうなの……?」
泣きそうな顔をする美咲を見て、唯織は深くため息をついた。
「すぐに泣くのはやめろよ……。 心配するな。 俺が家まで連れて行ってやる」
「うん、ありがとう……」
唯織は立ち上がり、美咲を背に乗せた。
「落ちるなよ」
「うん」
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