3人が本棚に入れています
本棚に追加
唯織がピンク色のハンカチを差し出すと、美咲は首を振る。
「いいの。 それ、天狗さんにあげる」
「いいのか?」
「うん。 その代わり、名前を教えて」
「名前?」
「うん」
「唯織だ」
「イオリ……。 かわいい名前だね」
にっこりと笑いかける美咲に、唯織はなんと返していいのか分からない。
とにかく早く人間から離れてしまおうと、美咲を帰るように促した。
「もう行け。 みんなお前を探してるぞ」
「うん……。 でも、その前に降ろして」
「あ、すまん」
唯織は足を枝にかけ、腕に美咲をぶら下げて下におろした。
「ありがとう!! 会いに行くからね」
「いいから、早く行け」
美咲はにっこり笑って、手を振りながら家に走っていく。
唯織はくるっと回って枝に乗ると、彼女が家に入っていくのを見守った。
美咲が大きな声でただいまーっと家に入ると、年配の女性が大きな声を上げるのが分かる。
「どこにいたの!? 自分で帰って来たの?」
「ううん、天狗さんに連れて帰ってきてもらったの。 優しいお兄ちゃんだったよ!!」
「そうかいそうかい。 じゃ明日、天狗さんにお礼を言いに行かないといけないねぇ」
「うん!!」
お礼を言いに行くと言うのは、恐らく大天狗松神社への参拝だろう。
最初のコメントを投稿しよう!