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「その子、僕の知り合いだから。僕と川上がこの誕生会に誘ったんだ。その服だって川上が勝手に決めたやつ。着替えさせるよ」
「お前は…」
「一応こんななりでも一端の小説家なんでね。お前とか言わないでもらえるかな?警視庁犯罪取締係の藤田五郎さん」
男の子は澄ました顔で警察官・藤田五郎(フジタゴロウ)を追い払うと私の手を握り、走り出した。
「あんた名前は?」
「え?泉鏡花…です」
「なに言ってんの?僕の名前じゃなくてあんたの名前」
(ん……?まさか…)
そんな疑問を浮かべながらもう一度言った。
「だから私の名前は泉鏡花です!」
「嘘でしょ……?僕と同じ名前…………」
しばしの間そこに沈黙が流れたがその沈黙を破ったのは男の子の泉鏡花(イズミキョウカ)だった。
「そうだ…ねぇあんた、その格好、すごくおかしいから僕の家すぐ近くだから着替えに行くよ」
「えっでも私は…」
「女なのは分かってるよ。女物の服ぐらいあるから」
ついて行くと確かに家はすぐ近くで女性用の着物があった。
繊細で綺麗な和服に思わず動けなくなった。
「あ、その服返さなくていいから」
「え?」
「そんなばい菌がいっぱいいそうな服いらないから」
「もしかして潔癖症…」
「悪いかよ!?」
泉鏡花(イズミキョウカ)。有名な小説家。ここまでは私達平成人(?)が知る情報である。しかし外見は知らなかった。肩まで伸びた綺麗な髪。ちょっと猫みたいな目。
まぁ現代で言うツンデレ、というタイプだ。
「あのさぁあんたは何なの?家は?家族の名前は?学校は?友達は?」
「あの…覚えてないんです。気づいたらあの会場にいて…」
「はぁ?なにそれ?意味わかんないんだけど……」
「それは私も……」
正直私も分からない。
家族の顔、友達、住所、特技、趣味何もかも思い出せない。
名前以外は分からない。
ただここが………明治時代である事は分かる。
私は元々歴史が得意だったから(それだけは知っていた)。
「とりあえず鹿鳴館に戻ろうか」
「ろ、鹿鳴館?」
「さっきまでいた館の事。このあたりじゃ大きな館だよ」
鹿鳴館(ロクメイカン)は明治時代ではかなり有名な館らしい(鹿鳴館の事はあまり詳しくないのでWikipediaで調べて下さい)。鹿鳴館に戻ると先程の警察官が謎の外国人と言い争っていた。
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