少女と野良猫

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 我輩は猫である。  正確には、五分前まで猫だった者である。  うだるような真夏のある日のこと、我輩は知らぬ間に知らぬ天井を仰いで倒れていたのだった。上体を起こすと、その違和感にすぐに気が付いた。  まず、猫である我輩が上体を起こす、などということができるはずがないのだから。  自分の手や足を見回してみると、全く見覚えのないそれだった。しかしどこかで見たことがある。  そう、我輩の手足は人間のものだった。  部屋の中には、巨大な己を映す板が設置してあ った。我輩はそれを躊躇いなく覗き込んでみたが、そこに移りこんでいるのは案の定我輩ではなく、見知らぬ人間の青年だった。
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