少女と野良猫

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 さっぱり何が何だかわからない。一体なぜこんなことになってしまったのであろうか、見当もつかぬ。  考えても埒が明かないということは明白だった。立ち上がって、足を曲げてみたり、手の平を閉じたり開いたりして感覚を確かめる。成る程、二足歩行に何の苦も感じないし、こうして両の手が常に空くのでなにかと便利だ。意外と人間も侮れぬ。  そんなことをしているうちに、ドアが向こう側から二回叩かれる音がした。そのすぐ後に、人間の少女の声が聞こえ、ドアが開かれた。 「失礼しま……あ、起きたんだね」  声も幼かったが、容姿を見ると更に幼かった。身長は、現在の姿の我輩よりも頭二つ分ほど離れておろう。 「気分はどう? よく眠れた?」  彼女の手元には、冷水の入れたタライと布。よく見れば、我輩の足元にも長めの布が放り出されていた。起きたときにでも額からずり落ちたのだろうか。
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