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少女は我輩の目をじっと見つめている。どうやら、返事を待っているらしい。
だが、生憎我輩は人間の介する言葉を発したことがない。その望みに答えることは出来ぬだろう。
「まだ、本調子じゃないのかな。欲しいものとかある? 遠慮しないで言ってね」
それでも少女は、あくまで我輩からの返事を待っているようだった。心優しい少女なのだなと、僅かながらに感心す る。
「……暑い。水をくれぬか」
「お水だね! わかった、いま持ってくる!」
少女はとても嬉しそうに、扉から出ていった。そんなにもはしゃぐことだったのだろうか。
それよりも驚きなのは、我輩が人間の言葉を普通に話せてしまったことだ。どう話したのかは覚えていない。
だが、伝えようとして、自然に言葉になったことは本能で理解した。
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