少女と野良猫

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「はい 、おまたせ。折角だから、おいしい麦茶を用意したよ」  少女は盆の上に、茶色い液体の入った透明の容器を二つ乗せて帰ってきた。どうやら、これが麦茶という代物らしい。  少女は一つを我輩に、もう一つを自分の手元に置き、足を畳んで座り込んだ。 「ねぇ、座ってもいいんだよ。ずっと立ってたら疲れちゃうでしょ」  我輩は少女に言われるまま座り込んだ。どう座るのかわからなかったが、自然と足が楽になるような座り方になっている。少女のそれとは違った形だった。 「飲んでみて。冷えてておいしいよ」  促され、容器を口元に運んだ。冷たい液体が、我輩の口内に流れ込んでいく。 「どう? どう? おいしい? ねぇ、おいしい?」  期待に満ち満ちた目を、我輩に向けてきた。少女が何と返事を望んでいるか、今の我輩にはわかっている。 「うむ。これは美味い」 「でしょでしょ! おばあちゃんから教わった作り方でそっくりそのまま味を再現してるもんね! おいしくて当然だよ!」  本当によく笑う少女だ。思わずこちらの頬も緩んでしまう。
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