一章

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 東の島国リハン。  望まずにこの地に来れたのは幸運である。自腹で渡ればかなりの金額となってしまう。  一年ぶりの大地。  漕ぎ手の間、船を降りることは禁じられていた。  久しく見る地面にエクシブは意気揚々と船を降りていく。  この地の建物は木造だと言うのに、築百年をとうに超えている物が多い。嵐や津波もあると言うのにだ。  エクシブがこの地に降りた理由は正にそれ。  実はこの国には変わった特産物がある。それは加工すれば永遠に使えると言われている木である。  永遠に、というのは言い過ぎだろうが、耐久性に関してはあながち嘘ではない。そんな木に魅了された一人の貴族がいた。  エクシブは船に乗り込む前に、なんとか苗木を手に入れてほしいと依頼されていた。  ギルドを通している上に期間無制限の依頼。  なかなか来ることができない地、依頼を早く済ませておいて損はない。 港を出て街を見る。 「まるで村だな」  見たままを口に出したが、世間的に言うとここは立派な王国だ。  見た目は村とはいえ、流石に宿が無いということはない。寧ろ外来者が多いため、宿や酒場が多い。エクシブは貰ったばかりの金貨を奮発し、少し高級な宿を確保した。
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