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深い森の中、妙に広がった場所に立つ巨大な樹の下、一頭の獣が寂しげな瞳で月を見る。
この深き森に捕らえられてから、どれ程の月日が流れたのか。
かつてはこの獣を服従させようと多くの者たちが来たものだが、もはや善くも悪くも忘れられた存在なのだろう──。
獣は必要ともされず消されることもなく、ただただ生き永らえる身を何度も怨んできた。
獣はふと呟いた。
「永遠に続く孤独は死と同義だというのに──。朽ちぬ体躯が憎らしい」
暗闇の中、月明かりに輝く白銀の獣は静かに森へと消えていく。
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