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上が大騒ぎになっている頃、一仕事を終えた漕ぎ手達が久々の休憩と仲間の別れで湧いている。
ここにいる犯罪者や奴隷の中に一人だけ特異な者が居た。
年は二十代半ば、焦げ茶色の髭や髪が伸び放題。
少しやつれているが優男ではなく、体つきは細身ながらも鍛え上げられた体つき、身長も決して低くはない。
犯罪者でもないのに経験してみたいという理由で一年契約の漕ぎ手となった男、リン=グラン=エクシブは契約を終え、また一人の旅人に戻る時がきたのだ。
「エクシブ、どうだったよお勤めは?」
「十年なら死んでたな。重い罰になるわけだよ」
見張り役の男ザクの言葉に苦笑いしながら答える。
すると、エクシブの背中を叩きながら笑った。
「そうだろ、そうだろ。こっちにとっちゃお前は大事な戦力でもあったからな、漕ぎ手で死なれちゃ困るからひやひやしたものだぜ」
洒落にならない、と苦笑いでザクに返したエクシブは、自分の回りにいる囚人たちとも挨拶を交わす。
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