129人が本棚に入れています
本棚に追加
「オレは降りるが、またいつか会えたら酒でも飲もう」
「はは、運良く生きてればな。お前は俺たちと違う。意地でも長生きしろや」
彼らは重罪人。この厳しい環境においてはもって二、三年だろう。言うなれば今生の別れである。それでも彼らは笑いながらエクシブを送る。人以下と成り下がった彼らと近い目線で生きた最後の者。
交わす言葉は軽いが想いは違う。この場を生きて出る者に自分たちの分まで、と想いを託して送り出すのだ。
故にその想いに対して目に光るものが現れようと、凛として返さねばならない。
「任せろ」
たくさんの歓声が上がる中、ザクが声をかける。
「挨拶が終わったら、船長室へ行け。契約の終わりは船長に、だ」
「わかった。後で行くよ」
この部屋に居る者たちへの挨拶も終わり、別室の船員たちのもとへ行こうと扉に手をかけたエクシブは、返事をしながら部屋を出た。
「契約終了……か」
騒がしくなった部屋の扉を閉めこの一年をふり返る。
最初のコメントを投稿しよう!