一章

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 革手袋を見て船長は言う。 「やはりとらないか」  苦笑いで返す。 「これだけは」 「まあいい」  理由がわかっている船長は特に深追いせず、解放の儀式をこなしたエクシブに対し満足げに頷くと、契約書を机の上の蝋燭にあて燃やした。 「今日この日をもってリン=グラン=エクシブを解放とする」  エクシブはその言葉と同時に大きなため息を吐く。  緊張が解けたのか、へなへなとエクシブの身体がだらけていった。  それを見た船長はにやりと笑い聞く。 「さしものグラン=エクシブも緊張するか?」  苦笑しながら自分の頭を掻きこたえる。 「あんな眼光で見られちゃ、猛獣だって裸足で逃げますよ」  怖かった、と大袈裟に肩を竦めて言うエクシブを、船長は豪快に笑った。
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