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†††
“確か最初の離婚は渉様が3才くらいで2度目は5年後だったと思いますよ”
雅美が教えてくれた話を繰り返し思い出しながら桃花はバスルームから自分の部屋へ戻るとぽすっとベッドに倒れこんだ。
まだ濡れた長い髪を寝転んだまま広げたタオルの上で拭く。
桃花の疲れた身体はもう起き上がるのを拒否していて、ゴロゴロと転がりつつ髪の毛の水分を拭き取った後、ベッド脇の椅子にタオルをポンっと投げかけた。
そんな複雑な家だなんて・・・
お母さんは素敵な女優さんだけど子供にしてみたら寂しいよね。
咲良ちゃんは明るく話してたけど色々あったんだろうな・・・
はっ
もしかして成宮のあのやる気の無い態度ってこの事が原因!?
アイツとちゃんとまだ話したことないから何考えてんのか全然わからないんだけど・・・
でも妹思いのお兄さんじゃん?
無理やりさせられる事になった家庭教師だけど、私嫌じゃない。
咲良ちゃんはいいコだし、成宮がもっと嫌なやつなら私が嫌がる事をさせるはずだ。
『電話がかかってきたら10秒で出る事』とかワケわかんない事言ってたくせに・・・
全然電話かかってこないし?
・・・イヤ、なくていいんだけど~
ホントにこれでいいんだろうか?
使われる事は嫌いだが『家庭教師』だけで済むのか・・・?という一抹の不安が桃花の脳裏を何度もよぎる。
明日もまた成宮迎えに・・・行かなくちゃ・・・
急な眠気が桃花を襲い、重たい瞼がゆっくりと閉じて・・・
桃花の意識は深い眠りに落ちていった。
††††††††††††
3
・・・渉くんありがとう
天使のような笑顔で日に透けたハニーブラウンの長い髪が急に吹いた風でふわりとなびく。
ふとした時に思い浮かぶのは・・・あれは誰だったのか?
6年前――――
父親の転任で1年間京都で暮らしていた事がある。
女優でもある俺の母親『神条あかり』は再婚した相手との間に咲良がいたが
咲良が5才の時に離婚して父親とまた連絡を取り出した母親は咲良を成宮の家に任せるようになった。
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