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「でも・・・大丈夫なの石野さん?・・・家庭教師だけじゃなくて他に何かされてない?」
璃杏は心配そうに桃花を見た。
桃花は海吏が入れてくれたアイスダージリンティーをストローでちゅうっと一気に半分位飲むとすくっと立ち上がる。
9月とはいえ昼間はまだ残暑が残っており、桃花のノドはカラカラだった。
「大丈夫!不良に見えるけど意外と優しいとこも・・・ちょっとはあるし?」
何言われるのかと思ってたら“中学生の家庭教師”だもん。
成宮の家まで行かなきゃいけないのは面倒だけど、咲良ちゃんに会うのは楽しみだし・・・
― 楽勝じゃん?
年下の美少女と知り合いになるなんて滅多にないし・・・成宮の情報も訊きだせるしで
一石二鳥っ!!
「そう。じゃあ家庭教師行く日は遠慮なくウチの車使ってね?あと・・・」
「ん?」
「アタシのこと璃杏って呼んでいいわよっ桃花?」
無邪気な表情で親しそうに璃杏に名前で呼ばれて桃花はドキッとする。
小悪魔で天然だな・・・
女子の私にもこんな笑顔見せちゃうなんて・・・
璃杏が悪戯っぽく微笑みかける光景は、多分心を許した数少ない人間だけだろう。
・・・小悪魔も可愛いかも。
そういえば『好きになった人はいない』って言ってたな・・・?
ちょっとそんなアブナイ考えをちらつかせたが、すぐに桃花は頭を横に振って払いのけると、璃杏に『また明日ね』と告げた。
†††
「おーっ!速えっ!?」
「はっやーいっ!!桃花もしかしてタイム計ったらクラスで一番じゃない?」
100メートルを女子5人で走り終えた桃花に碧が飛び跳ねながら駆け寄ってきた。
「はあっ・・・そ、そう?」
碧から桃花のタオルを受け取って額に浮かぶ汗を拭きながら桃花は運動場全体を眺める。
少し遅れて彩がゆっくりこちらに歩いてきた。
1番前を走っていた桃花の2歩間隔を開けた後を彩が走っていたのだ。
「さ・・・さすがだわ・・・鍛え方が違うわね」
彩も碧からタオルを受け取ると余程疲れたのか膝に手をついて息を整えている。
「えー?鍛えてるって何を~?」
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