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そんな屍の上に、一点、白の動く物体が現れた。
白兎。円らな瞳で、少女を見据えていた。
少女は反射的に、得物である大鉈を振り上げ、白兎に飛び掛かった。
赤い世界に、綺麗な白い色をした物体の存在を許せなかった。
鬼気迫る少女の威圧、それを察した白兎はいち早く逃げる。跳ねる。
足場が悪く、思うように動くことが出来ない。対し鉈を構えた少女は、平地を駆けているかのように軽やか。ただしその動きは荒々しく、野性的。
とうとう白兎を射程に捉え、少女は大鉈を振り抜いた。しかし生きた獲物の感触はない。眼前から白兎は消え、鉈は足元に転がる骸を切り裂いた。
「随分と物騒な娘だ。私のシャルル・ コンスタンティヌス三世に襲い掛かるとは」
少女の背後から声、気配。少女は振り返りながら飛び退いた。
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