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少女は気に食わなかった。青年のその声も、蒼い瞳も、藍色の髪も、前髪で隠れた右目が何を見ているのかも。綺麗に整いすぎた青年の何もかもが。
「決めました。私の元へ来なさい。そうとも、それがいい」
青年はさも名案、と言わんばかりに声を弾ませた。そして、未だ這いつくばる少女に手を差し伸べた。
「私はアオイと申します。貴女の名前は?」
微笑みを浮かべる青年……アオイに、少女は何も答えない。ただ、その赤い瞳でアオイを見つめるだけ……だが、先ほどまで視線にあった刺々しさは和らいでいた。
「……困りましたね。名前がわからない……いえ、もしかして無いのですか? どちらにしろこのままでは不便ですねぇ」
差し伸べていた手を顎まで持っていき、困惑の表情を浮かべる 。そして暫く考えた後、口を開いた。
「では、私が勝手に名前を考えて差し上げましょう。どうせこれから時間を共にするのですから、問題ないですよね。そうですね、ハクトというのはいかがでしょう?」
言いながら、再び手を差し伸べる。アオイはとても清々しい笑みを浮かべていた。
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