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屍の山を越えると、アオイは森の中を駆けた。木々を跳び移り、それを続けると、拓けた場所に出た。そこには大きな洋館が佇んでいた。
「ここが私の……今日からハクトの家でもあります」
ハクトを下ろし、大きな扉を開いて招き入れる。
屋敷の内部は、簡素で落ち着いていた。装飾品などは最低限しかなく、比較的ハクトにも受け入れやすくはあったのだが、やはりこのようなものを見たのは初めてだった。きょろきょろと見回して、落ち着きがない。
「さ、先ずは体を綺麗にしましょうか。その汚れた体では気持ちが悪いでしょう? 体の隅々まで綺麗にして差し上げますからね、シャルル・コンスタンティヌス三世と共に! 私に身を任せて下されば結構ですので」
「ッ!?」
アオイはやはり笑顔だったのだが、先ほどのものとは何か違うものを感じたのだろうか、ハクトは大きく飛び退いた。
「どうしたのです? なにも危害は加えませんよ」
そう言った途端、アオイの抱きかかえていた白兎がするりと抜け出して、屋敷の中を跳ねた。まるでアオイを避けるかのように。
それを合図とばかりに、ハクトは全力でアオイの眼前からの逃走を図った。
「まだ遊び足りないのでしょうか。全く、シャルル・コンスタンティヌス三世 もハクトも困った子です」
溜め息を吐きつつ、アオイは少女と白兎を追った。
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