500人が本棚に入れています
本棚に追加
/98ページ
ぽてぽてと、間抜けな足音をわざとたてながら、彼が入っていった部屋の、リビングを挟んで向かいのドアを開ける。
部屋のなかには、備え付けられている最低限の家具と、段ボールが二つ。
予め送っておいた、ボクの数少ない私物。
……ここが今日から、ボクの部屋、か。
一歩足を踏み入れれば、そこはもうボクの部屋なのに、なぜだか入るのが躊躇われる。
まるで拒絶されてるみたいに感じるのは、何でだろう……。
心臓の代わりに重石が入っているみたいに、胸の辺りがズンと重い。
「……」
ボクはそっと息を吐き出して、足を一歩踏み出した。
部屋に入って、鍵を閉める。
カーテンのしまった室内は、少し薄暗い。
ドアの向こうに人の気配がしないのをしっかりと確認してから、ボクはフッと体の力を抜いた。
ついでに顔から表情も抜け落ちる。
ここまで、来たんだ。
いよいよ、始まる。
ボクはドアに凭れて、ズルズルと床に座り込んだ。
後にはもう、引き返せないーー。
頭の奥で、アイツの笑い声が聞こえた、気がした。
〇 〇 〇
クゥ~……。
空腹を訴えるお腹の音に、ゆっくりと浮上する意識。
重たい瞼を押し上げれば、目の前は暗闇で、パチパチと瞬きを繰り返す。
えーっと、ここは……あ、そっか。
ボク、学園に戻ってきたんだ。
だんだんと頭が動き出す。
どうやらいつの間にかに、眠ってたみたいだ。
それにしても、いつの間に寝ちゃったんだろう。
荷物整理をしようと思ってたのに……。
座ったまま寝たせいで痛む体に眉をひそめながら、ポケットからケータイを取り出す。
そして時間を見てびっくり。
わ、もう八時になるんだ……。
確か、寮に着いたのが三時過ぎくらいだったから、約五時間……。
思わず苦笑する。
そりゃあ体も痛くなるし、お腹も空くよね。
最初のコメントを投稿しよう!