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だけどボクは、そんな同室者の心情に気づかないふりをして、ふにゃりと笑った。
「いつの間にかね、寝てたみたい」
「は?」
「……おなか、すいた」
クゥ~……。
情けない声で言えば、タイミングよくお腹が鳴いた。
「チッ……心配して損した」
そんな彼の小さな小さな呟きは、もちろん聞こえないふり。
「あのね、ボクこれから、ご飯探しの旅に行ってくるね。だから、探さないでください。あとは~……あ、ぴーえす、九時までには戻ってきまーす」
同室者がまだ引きこもっていたら書いておこうと思っていた、置き手紙の内容を、ふにゃりと笑いながら彼に告げる。
ほんとはね、彼を夕食に誘うのが手っ取り早いんだろうけど。
だけどボクはここで、
“自由気儘な猫みたいな、それでいて危なっかしい庇護よくそそる少年”
を演じるつもりだから、彼を誘うつもりはない。
それにここで彼を誘ったら、あの子と同じになっちゃうから。
だからやらない。
絶対に。
だいたい、そんなことしなくても、ボクの予想だと……。
「ご飯探しの旅って……お前食堂の場所知ってんのかよ」
ほーらね、やっぱり。
一見怖そうだけど、面倒見が良いタイプな気がしてたんだよね。
眉間に皺寄せて、不機嫌そうな顔しながらも、予想通り心配してくれる彼。
そんな人の良さそうな彼には申し訳ないけど、ボクのやるべきことのために、しっかり利用させてもらうよ?
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