同室者

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  ボクは同室者を見上げて、ふにゃりと笑う。 「寮の管理人さんがね、案内してくれるって言ってくれたんだけど、探検したいからいいって断ったの。だからこれから探検してくるんだよ」 「探検って……ガキかよ」 「じゃ、行ってきまーす」 にっこり笑って、呆れた顔の同室者を押し退ける。 ぽてぽてと玄関に向かって歩きながら、鼻歌を歌っていると、 「おい、まてチビ」 「ボクちびじゃないよー?」 ぶっきらぼうに呼び止めてきた同室者。 予想通り呼び止めてくれたのは良いんだけどさ。 口が悪いよね、まったく。 ボクは平均よりやや小さいだけで、決してチビじゃないっていうのに。 ぽやーんと笑いながらも内心でぼやいていると、ムスっとしたまま同室者が言葉を続けた。 「お前じゃ一生飯にはありつけない。だから」 「ん?」 「……れ……、……った…………か」 ほんのり顔を赤らめて、目を泳がせながらは言う彼。 いちいち声が小さくなる彼は、見た目に反して照れ屋さんなようだ。 そんな姿は、なんだかでっかいわんこみたいで、ちょっと可愛い。 だけど、なんて言ってるのか聞き取れなくて、適当に言ってみることにした。 ニュアンス的に、こんな感じだったと思うんだ。 「レンコン買ってきて?」 「ちげーよ! 蓮根は冷蔵庫に入ってる」 あ、入ってるんだ。 「って、そうじゃねぇよ! 俺の作ったのでいいなら余りがあんぞって言ったんだよ!」 「作ったの?」 え、まさかの料理男子? 彼のノリツッコミに反応する余裕もなく、予想外の回答についうっかり素で返してしまった。  
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