同室者

4/12
500人が本棚に入れています
本棚に追加
/98ページ
  どうしようかな。 荷物整理は……後にして、先にご飯食べに行こうかな。 今の時間、食堂はまだ混んでるだろうし……コンビニでいっか。 決まったところで、自己主張の激しいお腹を擦りながら、部屋を出た、ら。 「……こんばんは?」 ボクの部屋の前に、整った顔をムッスーっと歪めた、同室者が立っていた。 なんでここに? というか、お腹空いてるからさっさと退いてほしいんだけどな……。 なんて本音を押し隠して、ぽやーんとした顔で同室者を見上げる。 それが彼にはお気に召さなかったようで。   「チッ……」 嫌そうな顔で舌打ちされた。 人の部屋の前に立って通行の邪魔をしている挙げ句、見下ろして舌打ちをかました失礼な同室者。 そんな彼をボクは、表情をピクリとも変えず、相変わらずぽやーんとした顔で見つめ続ける。 「……」 「……」 先に痺れを切らしたのは同室者だった。 「……って、……だよ」 「なーに?」 体に似合わず小さい声の彼に、こてんと首を傾げる。 同室者の彼は、もう一度舌打ちをし、恐ろしい顔でボクを睨み下ろしながら言った。 「だからっ! 今までなにやってたんだって、聞いてんだよ!」 「……」 えーっと……。 一見怒ってるようだけど、この台詞といい、わずかに赤くなった耳といい、どうやらボクを心配しているみたいだ。 まぁ普通そうなるよね。 なんせ、睨んでシカトしてやった同室者が、夕食の時間になっても部屋から出てこないんだもん。 しかも相手は転入生。 自分が原因で登校拒否なんてなったら……そりゃあ心配になるよね。  
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!