第1章

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 あの日以後、この国はずっと闇のまま昼間がない。  王城に護衛され保護という名目で監禁されていた ”CATBAR”のミクトラン襲撃事件の被害者、 その仲間達から、最も重要だとされていた人物。  つまりは、あたしの兄貴の親友。ステファンスが 監査委員の聴取の最中に、脱出した。でも信じない。 ステファンスが、あたしや兄貴を見捨てて単独で、 危険極まりない、城下に出るなんて非常識だ。  生意気だしレディの扱いも下手くそだけれど、 悔しいけどイイ男だって思ってた。兄貴の親友とか、 似合わないし、勇気も度胸もカッコイイって思う。 だから、あたし達を置いたまま単独に動くとしたら、 1つしか理由が無い。あのガラクタに未練がある。  あたしの気持ちなんかよりまずはガラクタ。 兄貴以外はガラクタに近づかせない。好奇心で、 褒めてやろうって、手伝いに行けば。 「危ねえよ。こいつにゃ色々入ってる。怪我なんて させたら臆病パレットでも、俺を殴るからやめろ。」  軟禁されながら思ってた。この城にディルはいる。 それを知ってるのは、王家に関係しない人間では、 多分あたしだけだ。ディルの親友アリアナだけ。 それでも監査委員は、ステファンスを厳重に調べた。  その結果がこれ。ステファンスは監査聴取中に、 消失、該当監査担当者は行方不明。  何か起きたんだ。兄貴のパケットはヴァイオリンも 弾けずにディル、ディルうるさい。兄貴のディルは、 壁一枚隔てた向こうにいるかもしれない。  でも、あたしはステファンスが。心配だから。 「えっと、あーあー。聴こえますか?どうぞ。」 人の言葉を話す猫の話は、ディルから聞いてたけど。 黒猫だって言ってた。ここにいるのは虎猫だ。小さい。 「あ、あのー。通じていたら、返事下さい。 ごめんなさい。あの気取ったいけすかない黒猫と 私は違って大魔女のオズマ様のお使いで来ました。 でも、見習いなので、本能に依存しない魔術には 慣れていなくて。人間の声に聴こえますか? アリアナ様でいらっしゃいますか?」 「あ、うんうん。あたしがアリアナ。合ってるよ。 それにアンタの声も人間に聞こえるから大丈夫。 本当にディルが言った通りだ。猫が喋るんだねぇ。」  唖然とした油断があった。うっかりディルという 人物を知っている。そのディルが猫と人間の会話する という事を知っている。という2点を拾われた。
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