第1章

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「乱暴をお許し下さい。アリアナ様。アナタだけが、 本来は王族とあり得ない、親友の血脈に無関係な線を 結ばれた方なのです。これを東洋では【縁】と申します。」 「だからって、あたしに何が出来るの?!どこへいくの!」 「オズマ様の隠れ家にお連れします。ステファンス様の作品が 完成したその後に、アリアナ様がどうしても必要なのです。 王女ディアスプロ様が、唯一アナタ様にだけ話した秘密が あるはずか我が主は言われました。それが全ての鍵だとも。 いま、王城はこの国家で一番危険なんです!」 「危険!危険!前いた国もそうだった!よくよく聞けば、 リクラッカ周辺の都市国家自治群は全て内戦中で、 あたしら兄妹も焼け出されて……。どっちが危険なんだよ。」  アリアナには何年ぶりかの、薄い涙が浮かんだ。だが それはすぐに吹き飛んだ。 「だからです。リクラッカ王国が400年も長きに渡って、 いかなる戦乱も紛争も無かった理由。この国こそが、その 攻撃性の全てを400年も呑込んできたのです。  魔術結界などというものではなく。外交姿勢によってです。 この国は、周辺国の被害を最小限にする為にあるような国。 王妃、女王は、その犠牲になる太陽の巫女のような者。 国王陛下は、それを終らせたいと。神に祈っていたのに……。」 バルドを王城をたくみに抜けながら、”CATBAR”の 裏庭の、あの木のウロを目指す。 「神頼みなんて国王がすることかい?」 「ええ。その通りです。やはりアナタは解っている。」 「何がさ?」 「神がこの国を食おうとしていた事実を。 炎と不幸の神、ショロトルは死神ミクトランを食って 更に王国の守護神を食い、最大の力を得よとしています。 邪神、テスカトリポカを復元する為です。  それに対応するのに、魔法や呪文では全く歯が立たない! けれども科学と、アナタとディアスプロ様だったら! 神の力には魔法は、無力なんです!」  時間が止まったような気がした。 オズマ様の申しつけを死守できなかった。 バルドは王城の中央にある、噴水に落ちていった。  アリアナを閉じ込めた薄茶の水晶は、冥府の犬、ジャッカル。 死者の書を扱うアヌビスの手に落ちた。犬の猫よ。  ケツァルコアトル神の弟、太陽の運命に逃げた炎と不幸の神 ショロトルの手に落ちた。王城を見下ろして宙で笑う。  これで終わりだ。クソ猫ども。噴水のバルドを摘まんで。
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