終章 新たなる蜜月の始まり

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 けれど、身分証の提示を求められているなら仕方がないと、僕は渋々免許証を見せた。 「確認いたしました。確かに、こちらに宿泊しております。劉様からのご要望で、宮村大河様という方がいらっしゃったら部屋に通すように言われておりましたので、確認させていただきました」  なるほど、そういうことか……ある程度、僕がここにくるってあいつもわかってたんだな――。  ホテルのボーイに部屋まで案内すると言われたが、僕はそれを断り、劉のいるスイートルームの階まで行くエレベーターホールへ向かった。  エレベーターに乗り込むと、ドクンドクンと心臓の音が徐々に大きくなって耳障りに思えた。  なに緊張してんだよ、しっかりしろ――。  そう自分に言い聞かせて、ガラス張りのエレベーターの窓の外に目をやった。次第に眼下に広がっていく夜景を見ながら気持ちを落ち着かせようとする。  こんなに夜景は綺麗なのに、今から向かうところは修羅場になるかも知れない。そう思うと、ますます緊張で身体が強ばっていくのを感じた。
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