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「お客さん、知ってます? この爆破事件、闇組織絡みかもしれないって、ひとり刑事が刺されたっていうじゃないですか、闇組織の連中なんかやたらかかわらない方がいいってのに、ねぇ?」
いままで沈黙だった運転手がいきなり話しかけてきてハッとなった。
「そうですね、でもその刑事さんは……すごく正義感のある人だと思いますよ」
僕が反発するように言うと、運転手は鼻を鳴らしてまただんまりになった。
滑るように道路の街灯が次々と過ぎ去っていく。そして、その向こうにマリオングランドホテルの頭が見えてきた。
あそこに劉がいる――。
じっとりと汗をかいた手のひらをぐっと握り締めると、劉の不敵な笑い声が今にも聞こえてきそうな気がした。
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