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「残念だったな劉健飛リュウ ジェンフェイ。警視庁は爆破しないぜ」
「え……?」
耳を劈くような爆破音を覚悟していたが、二時を回ってもまったく何も聞こえなかった。そして代わりに聞こえたのは、まさかの人物の声だった。
「篠田……? な、んで……ここに?」
「話は後だ。劉、お前には山ほど容疑がかかっている。連行しろ」
「はっ……なんで俺が? これは一体どういうことなんだ……?」
劉は、向こう側に見えるいつもと変わらない警視庁本庁舎を忌々しそうに眉を潜めて睨んでいた。
「くそ……あいつらしくじったか」
「しくじっちゃいねぇよ。確かにお前の部下はご丁寧に百箇所以上も爆弾を仕込んでくれた。おかげで撤去するのに時間がかかったぜ」
「撤去……? どうやってだ? そんなはず――」
「劉、もうやめろよ」
篠田の背後からすっと現れたのは、安田だった。昔の友の哀れな姿に、安田は落胆した表情を浮かべている。
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