3670人が本棚に入れています
本棚に追加
「大河……だからお前は甘ちゃんだって言うんだよ」
「っ――り、ゅ」
劉が懐から銀色に光る何かを取り出して、僕に向けたと同時に目の前が真っ暗になった。
耳を劈くような爆音がして、何が何だかわからず混乱した。
「っ……!」
確かに目の前が真っ暗になったが、僕の意識はしっかりしている。真っ暗になったと思ったのは、篠田の背中が目の前にあったからだった。ふわっと煙草の香りが鼻を掠めた時、篠田の背中がズルリとスローモーションのようにゆっくりと落ちていった。
「し、のだ……」
そして視界が開けた向こうに、銃弾を放ったばかりの劉が口元に笑みを浮かべて立っていた。
さっきの音は、銃声……だったのか――?
きな臭い硝煙の匂いと、細い煙が銃口からゆらゆらと揺れ出ているのを見て、劉が僕を撃とうとして、篠田がそれを庇ったのだと悟った。
「おい! なにぼさっとしてんだ。早くあいつを捕えろ」
「は、はい!」
安田は篠田が撃たれた光景を目にしながらも毅然として言うと、はっと我に返った捜査員が劉に手錠を掛けた。
最初のコメントを投稿しよう!