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そう篠田に言ってやりたかったのに言葉に詰まってしまう。だから僕はその代わりに篠田の首に腕を回して思い切り抱きしめた。
「僕はいつだってあんたの役にたちたいって思ってたんだ」
「十分よくやってくれたよ。俺と安田が警視庁にばらまかれた爆弾を回収するのに時間がかかっちまった。けど、お前が劉を引きつけてくれていたおかげで難を逃れたんだ。俺もついうっかりホテルの名前を口走ったから……後で後悔した。きっとお前はひとりでホテルに行くだろうって。正直、爆弾処理をしながらお前のことばかり考えてた。お前に何かあったらって考えただけでも気が狂いそうだった。だから、こんな怪我程度で済むなら安いもんだ」
「でも、さっき病院でぐっすり眠ってたじゃないか」
「俺の狸寝入りもわかんないなんて、本当に馬鹿だな」
篠田はそう言って、にこりと優しく微笑んだ。僕の好きな篠田の笑顔がまた見られたことが嬉しくて、いつもは言い返したくなるような篠田の憎まれ口もどうでもよくなってしまう。
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