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 四年前の夏――。 「君のアクセサリーデザインはシンプルだけど、上品で可愛い感じのするものだね」 「あ、ありがとうございます!」 「希望通り、デザイン業界で活躍できることを祈っているよ、頑張ってね」  今でも忘れはしない。大学三年の就職セミナーの時、皆本紅美は劇的な出会いをした。  ゲストスピーカーとして招かれていた宝飾業界の貴公子、朝比奈翔の言葉にのぼせ上がっていた紅美は、あれよあれよという間に見事、持ち前のデザインの才能を開花させ、憧れの朝比奈翔が経営する大手ジュエリーブランド“アルチェス”にデザイナーとして就職した。  あの頃は、希望に満ち溢れ、毎日が輝いていた――しかし。 「……うぅ、いったぁ」  ダイナミックに転げ落ちた階段をぼんやり見つめながら、紅美は一瞬巡った四年前の回想から現実に引き戻された。 (こんな……こんなはずじゃなかったのに) (あんな人が私の上司なんて……) (これからどうなっちゃうのぉ~!)  この日、入社三年目にして紅美の輝いていたはずの未来が、派手な音を立てて崩れ落ちたのだった――。
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