628人が本棚に入れています
本棚に追加
「それが原因で朝比奈さんは指輪のデザインをしなくなったんですか……?」
「あぁ、最初の頃はアクセサリーを見るのも嫌なくらいすごい拒絶反応だったよ。けど、時が経って気がついたんじゃないか? 結局、自分にはデザインすることしかないって。けど、どうしても指輪を作ることだけは未だに嫌みたいだな、何度も過去にトラウマを乗り越えようと努力はしたらしいけどね。気持ちを紛らわすように女遊びも激しくなったのはその頃からだよ」
「どうして私に話してくれなかったんでしょうか……? そんなに私は頼りない部下なんでしょうか……」
すると、朝比奈社長が静かに首を振った。
「そうじゃない。きっと瑠夏も自分の気持ちに気づいてない。皆本さんがどんなに心の拠り所となっているかね」
「……そうでしょうか」
「あぁ、そうだよ。だって、男は自分の好きな女性の前では常にかっこよくいたいもんだからさ。婚約者に振られて同級生に横取りされたなんて、あいつの口からは言えないよなぁ……あはは、なんか今になってあいつの気持ちがわかってきたよ」
そう言うと、朝比奈社長はくすくすと笑いだした。
最初のコメントを投稿しよう!