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「お母さん困っちゃってるのよねぇ、毎日のように借金取りがうちに来てさ、気が狂いそうよ」
「そんなの! 自業自得じゃない……私には、関係ない」
往生際の悪い娘に、みどりはやれやれと首を振って言った。
「そう……そんなに嫌なら、これを見ても嫌だって言い張れる?」
「な……にこれ」
テーブルに投げ出された数枚のスナップ写真に、紅美は目を瞠って凍りついた。それは今日一日、朝比奈社長と喫茶店で談笑をしたり、ドライブに連れて行ってもらった時の隠し撮り写真だった。
「お母さんだってあんまり手荒な真似はしたくないのよ? でも、あまりにも言うことを聞いてくれないようなら……強硬手段も辞さないわねぇ」
紅美にとってみどりは残念ながらこういう親だった。
昔から親としての愛情なんて微塵も与えてはくれなかった。あくまでも母でなく女であることを選んできたのだ。だから、娘を売るという行為にも自覚がないのだろう。
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