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「あなたの愛する朝比奈店長がこれを見たらどう思うかしらねぇ……そうだ! 見出しは“アルチェスの若き社長に見初められた幸運のデザイナー”ってのはどう?」
「ふざけないで!」
紅美はテーブルにばらまかれた写真を勢いよくなぎ払うと、パラパラと床に写真が散らばる。それを見ていたみどりが厭らしくにやりと笑った。
「人のプライベートをカメラマン雇って隠し撮りするなんて! 卑怯者!」
「あらまぁ、それが親に対して言う言葉?」
「あなたが私の親だなんて思ったこと……一度もない!」
紅美が声を荒げると、みどりも面白くなさそうに眉をひそめた。
「あなたに親だなんて思われたいなんて思ったことないわ。けどね……もう私にだってあてがないのよ! お願いだからそのネックレスを渡して」
今まで余裕な笑みさえ浮かべていたみどりだったが紅美に拒絶され、焦りを感じたのか借金に追い立てられてノイローゼ寸前の本当の姿を現した。その姿は収集がつかないほどに感情が入り乱れているようにも見えた。眼は釣り上がって充血し、よく見ると肌も荒れている。
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