Secret 8 大野の告白

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「うちの会社で働いても働いても先が見えない、ストレスも溜まっておかしくなりそうだった。酒に溺れたり女に溺れたりして、そんな僕の異変に絵里はいち早く気がついた。最初はなんでもないって誤魔化してたけど、絵里は勘の鋭い人だったから……すぐにうちの経営が危険だってことが知れて、私がなんとかするからって……」  大野の言葉が震えながら途切れた。見ると、同じようにグラスに添える指先も小刻みに震えている。 「あの時、絵里を止めておけばよかったんだ……しばらくして絵里が大金を持って僕の所へきたんだ。倒産は免れるくらいの金額だってすぐにわかって……僕はなにも考えずにその金を受け取った」  大野はカウンターに両肘を付き、組んだ指に額を押し付けながら話を続けた。朝比奈は、そんな様子の大野を哀れにすら思えてきた。途中で何度も、もういい、と話を中断しようと思ったが、真実を知ることは今の朝比奈にとって必要だった。
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