Secret 8 大野の告白

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「藁にも縋る思いだったんだ……けど、ある日、絵里の左の薬指に指輪がないことに気がついて青ざめたよ……あの大金の出処はどこなんだって問い詰めて問い詰めて、ようやく事実を聞かされて、その時僕は絵里に初めて手を挙げてしまった。あの時の絵里の顔は一生、僕の脳裏に焼き付いて離れない……親友の送った婚約指輪が、うちの会社が生き延びるための糧になってたなんて情けなくてさ……」 「なんだよ、そんな話……聞いてないぞ」 「言えるわけないだろ……絵里が良心の呵責に耐えかねて自殺したのも僕のせいだ。僕が彼女を追い詰めた」  大野の話が全て事実なら、今まで自分はとんだ誤解をしていたことになる。目の前でうなだれる馬鹿な男に、朝比奈は複雑な気持ちを抱いていた。 「皆本に目をつけていたのは、本当にルビーのためだったのか?」 「あぁ、最初はね、僕もあのネックレスの価値には気がついていた。瑠夏も同じようにあの子を狙い始めたから無性にあのルビーが欲しくなったんだ……どうせなら、最後まで嫌な男でいたほうが気が楽だろうと思ったんだ」 「ほんと、お前は昔から馬鹿だな」
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