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「まさか……あいつ」
『そう、そのまさか……だよ。紅美さんは借金返済のために金をせびる母親にあれを渡したんだ。それを偶然、葵の会社に持っていった……ってわけ』
「くそ……取り返す」
『どうやって? 葵は手放すつもりなさそうだったけど? いくらで母親から買い取ったのか聞いたらちょうど五千万だった。あの母親、本当にルビーの価値を知らないみたいだね、五千万以上の価値があるって聞いたら目の色変えて取り戻しにくるかもしれない』
「一度手放したんだ。そんなことさせるわけないだろ」
『まだ葵の手元にあるはずだから、話をしてみるといい』
「あぁ、わかった」
朝比奈は、紅美のルビーが失くなった本当の理由を知り、何もできなかった無力さに苛立った。
道端に寄せられた雪の塊を蹴り飛ばしたくなる衝動を抑え、平常心を取り戻すと震える手で携帯をポケットにねじ込んだ――。
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