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そんな文字が朝比奈の脳裏に浮かんだ。
「……くそ」
初めからうまくいくなどと思っていなかった。おそらく、葵のことだ。話を誤魔化してこうなることは予想していた。
一体どうすればいいんだと、頭を抱え込んだその時――。
朝比奈の携帯がポケットの中で震えた。そのタイミングの悪い電話に舌打ちをして、朝比奈は通話ボタンを押した。
『瑠夏か? お前、会社にもずっといないし一体どこほっつき歩いてるんだ?』
「……兄貴」
間髪入れずアルチェスの社長である朝比奈翔の呆れた一声が飛び出す。
『明日の指輪デビューの会見、時間わかってるんだろうな? 遅れるなよ?』
「あぁ、わかってるって」
朝比奈はそう言いながら、来週の指輪販売を開始するにあたっての会見を明日に控えていることを思い出した。
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