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『指輪を試着してもらうモデルも手配しておいたから、後で確認しておいてくれよ?』
「あ、あぁ……その件だけどさ、やっぱりモデルはいらない」
『はぁ? 新シリーズの指輪を会見中にお前がモデルにはめるっていう大切な見せ場じゃないか』
「思い当たるモデルがいるから、そっちは悪いが断ってくれ……」
思わぬ朝比奈の申し出に社長が電話の向こうで絶句している。自分勝手なドタキャンをさせてしまうのは忍びないが、朝比奈には考えがあった。
『わかったよ。その代わり上手くやれよ』
「あぁ、わかってる」
結局、兄の優しさに甘えてしまう自分を情けないと思いながら、朝比奈は電話を切ると、思い立ったように電話を別の場所へかけ始めた――。
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