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会見が始まるまであと数時間――。
刻々とその時間が迫るたびに、紅美はそわそわとしてしまう。
(だめだ! 仕事に集中しなきゃ……)
こういう気持ちを乱された時に限ってミスをしてしまう。気を引き締めてデスクに向かおうとしたとしたその時だった。
「皆本さん、バイヤーの宇都宮さんからお電話入ってます」
「え……?」
意外な相手に紅美は目が点になり、電話を見ると早く出ろと言わんばかりに外線が赤く点滅している。
「はい、皆本です」
『は~い、地味子ちゃん』
緊張しながら電話に出てみると、それとは逆に葵の声は陽気なものだった。しかし、初めて自分宛に電話がかかってくるということに紅美は思わず警戒せずにはいられなかった。
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