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『私があなたに電話したからって別に怖がる事ないのよ? ちょっと話があるんだけど……』
「話……?」
『電話じゃしづらいから、今からアルチェスの屋上に来てくれる?』
「屋上……ですか?」
『そう、あんまり人目につかないところがいいの』
なぜ屋上なのかという細かいことは聞かずに、紅美は葵に返事をするかどうか逡巡した。
『別に忙しいならいいんだけど……きっと後悔することになるわよ?』
言葉の語尾に鋭さを感じ、紅美は考えるのをやめゴクリと喉を鳴らした。
「……わかりました」
静かに受話器を置いて、ため息をつくと怪訝そうにこちらを見ている沢田と目があった。
「どうかしたんですか?」
「い、いいえ。あの、ちょっと席外しますね」
沢田に追求される前に早くオフィスを出たほうがいい。紅美はそう判断すると、開いていた資料を閉じて屋上へ向かった。
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