628人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前の指輪はこっちだ」
「え……?」
一瞬、朝比奈が小声で何かつぶやいたが、あまりにもフラッシュの数が多すぎて、まともに目を開いていることができなかった。朝比奈に手を持ち上げられた瞬間、紅美の心臓がどきりと跳ねて左の薬指に指輪がするるとはめられていくその様子を、じっと息を呑んで見つめた。
(私の指に……朝比奈さんの指輪が……)
キラキラと輝くその指輪はフラッシュに反射してさらに瞬き、こんなに美しい指輪が自分の指にはまっているというだけで、信じられない思いで胸がいっぱいになった。
「皆本さーん、カメラに指輪を見せてもらっていいですかー?」
「え……? あ、はい」
記者に言われて紅美が緊張した面持ちで指輪をカメラに見せる。とその瞬間、紅美の脳裏に前園絵里が、今の自分と同じようにカメラに指輪を見せている姿が蘇った。
最初のコメントを投稿しよう!